がん患者にみられる代表的な精神症状

摘要

がんはいまだに死を意識させる疾患である上， 図1に示したように，診断時（病名告知）をは じめ，再発?進行時，抗がん治療の中止時など，経過中に何回もいわゆる「悪い知らせ(bad news) 」を受ける可能性をもっており，また，た とえがんが治癒して長期に生存していても，いつ か再発の悪い知らせを受けるのではないかという 不安がつきまとうことから，他の身体疾患に比べ て患者の受けるストレスの程度は計り知れない. ここでいう悪い知らせについては，Buckman が「患者の人生における将来への見通しを根底か ら否定的に変えてしまうもの」と定義しているよ うに，死の恐怖を抱かせるもっとも強いストレス 要因となるが，他にもがんの経過中には様々なストレス要因が考えられている.これらの要因につ いては，「死の恐怖」の他に以下のようなものが 挙げられている.すなわち，「人生目標の制限」， 「能力の喪失」，「容姿の変貌」，「家族や医療者へ の依存」，「社会的役割や人間関係の途絶」などで， いずれも大きな要因となっている.