造血幹細胞移植合併症の病理診断

摘要

造血幹細胞移植（HSCT: hematopoietic stem cell trans-..plantation)は現在，血液系腫瘍に対する唯一の根治的 療法である。HSCTは移植ソ一スにより自己幹細胞と非 自己幹細胞に大別され，後者は血縁者間，非血縁者間， 臍帯血などに分けられる。HSCT後の病態は極めて複雑 であるが，様々な合併症が起こり，合併症診断の一助と して病理診断が行われる。HSCT合併症の病理診断とい うと，急性期のGVHD (graft versus host disease)や TMA (thromboticmicroangiopathy),移植後リンパ増殖 性疾患などが中心に語られる。しかし，原病再発や感染 症，薬剤性障害といった疾患も当然考慮されるべきであ り，特に前処置での大量化学療法や放射線療法，GVHD 抑制のための免疫抑制剤，抗菌剤などの薬剤性障害に伴 う多彩な変化が常に複雑に関与しているのが現実の病理 標本である。