腎尿細管上皮細胞と自然免疫

摘要

尿路感染症は臨床的にきわめて頻度の高い感染症であり，逆行性に上昇してきた細菌に腎で直接応対するのは腎尿細管上皮細胞（renal tubular epithelial cells：TECs）である．菌のTECs付着に続いて，①TECsからの起炎物質（おもにケモカイン）の分泌，②好中球,マクロファージなどの遊走と集簇,③細菌の駆除および組織障害，のステップが進行する．TECsはTLR4をはじめとして数種類のToll-like receptorを高レベルで発現しており，TLRの刺激によって各種のケモカインを産生する．さらに，TECsは，MHC class ⅡやCD80，CD40などの補助刺激分子も発現しており，T細胞を直接活性化させることができる．TECsの活性化は尿路感染症の駆除ばかりでなく，糸球体腎炎などのその他の腎疾患の進展にも大きな影響を与える．本稿ではTECsの免疫細胞としての役割にスポットをあてる．