固形癌とDIC その病態と治療

摘要

わが国で発症が報告されるDICの29％が周形癌に起因する．固形癌のうちでDICの発症数がもっとも多いのは肝細胞癌，肺癌，胃癌，結腸癌，胆管癌であり，発症率では胆管癌，膵癌，卵巣癌,前立腺癌の順である．悪性腫瘍におけるDtCの発症には，①腫瘍細胞による凝固促進物質の産生·放出あるいは細胞表面への発乳②腫瘍細胞·組織の崩壊に伴う凝固促進物質の血中への放出，③腫瘍細胞に対する宿主の免疫反応などにより刺激されたリンパ球·単球·マクロファージ系細胞における凝固促進物質の発現などが関与していると考えられるが，なかでも組織因子（tissue factor：TF）をはじめとするさまざまな凝固促進物質の発現·放出がもっとも重要である．これらの発現調節が今後の治療の要となるものと期待される．