慢性肝炎と肝発癌

摘要

近年,わが国で多発しているウイルス性肝炎から発症する肝癌による死亡者数は増加の一途をたどっており，深刻な医療問題となっている．本病態ではウイルス感染により誘起される慢性炎症が発癌の引き金となると考えられているが，その分子背景は不明である.慢性肝炎では炎症反応に起因する活性酸素種の産生が亢進し，これが酸化ストレスとして肝細胞死と再生反応を増幅している．この際，慢性的な酸化ストレスが遺伝子を傷害して発癌を誘起すると考えられる．活性酸素産生の主産であるミトコンドリア内のDNAは，ヒストンで保護されたクロマチン構造を有する核DNAに比べて酸化傷害による突然変異を起こしやすい．