依存性薬物と中枢ヒスタミン

摘要

中枢ヒスタミンニューロンは視床下部に結節乳頭核を形成し，そこから中枢神経系に幅広く分布してほかの神経系と密接に関連し，睡眠覚醒リズム，食欲や性行動など多様な脳機能に関与している．最近の研究によりモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬や，アンフェタミンやメタンフェタミンなどの覚醒剤の急性効果や依存形成にも，中枢ヒスタミンはドパミン神経系との相互作用により生体防御機構の役割をもつことが明らかになった．さらに，薬物依存の再発準備性や精神病状態においても，中枢ヒスタミン神経系の機能完進が密接にかかわっていることが示唆された．今後，中枢ヒスタミン作動薬が薬物依存形成や精神病の発症を予防するあらたな向精神薬として期待される．