視神経の再生医療-魚から学ぶ中枢神経再生機構

摘要

ラットの視神経に実験的損傷を与えた場合，その細胞体である網膜神経節細胞は早い段階でアポトーシスに陥り，やがて網膜全体にその変性が及ぶ．その結果，視神経損傷後約20日で生存する網膜神経節細胞は約30％にまで減少する．ところが，魚類（ここでは金魚）では，視神経を切断しても損傷前後での網膜神経節細胞の生存率はほとんど変動せず，アポトーシスによる細胞死を免れるのである．そして約1週間後には新しく軸索の再伸長が起こり，約1カ月の期間を経て視覚中枢である視蓋に再入力し，シナプスの再形成がなされ，数カ月の期間を経て完全な視覚機能の回復がみられる．