ダイオキシンと子宮内膜症免疫学的メカニズム

摘要

近年,子宮内膜症の増加が指摘されている.さまざまな原因が議論されているが，子宮内膜症の増加とダイオキシン類（TCDD）を代表とする内分泌撹乱化学物質の関連が注目されている．一方,子宮内膜症患者の腹水中においてマクロファージが活性化され，各種サイトカイン濃度の上昇が報告されており,腹腔内での異常な免疫反応が子宮内膜症の発生 発育ならびにそれによる不妊症の成因のひとつとして考えられている．　 TCDDの作用に関する研究報告は多数ある．なかでもと卜に近いアカゲザルにおいて,TCDDによる子宮内膜症の発生 発育促進の報告に興味が注がれる.しかし最大の問題は，動物実験における結果がと卜に対してはそのままあてはめられないことである．著者らの検討では免疫学的側面より単球／マクロファージのサイトカイン産生に関してTCDDの高濃度での毒性がみられるが，通常濃度で特別な反応を示すような作用は認められなかった．したがって，ヒトにおける子宮内膜症へのTCDDによる免疫学的関与は否定的である．