外傷初期診療ガイドラインJATEC~(TM)の概要

摘要

最初に，生理学的徴候の異常から切迫する生命危機を把握する（primary survey). 適切な救急処置で生命危機を回避する（蘇生）.呼吸·循環の安定を確保したうえで，系統的に全身の損傷検索を行う（secondary survey). 治療の優先順位を決定し，根本治療を行う（優先順位の決定と根本治療）. 自己および自施設の診療能力の限界を超えていると判断すれば，応援医師の要請ゃ転院紹介を図る(専門医との調整）.治療経過中，必要に応じ損傷の見落としがないかを繰り返し診察する（tertiary survey).初期診療の最初の目標は，的確な判断と的を射た処置で防ぎ得る死亡（preventable death)を回避することである.外傷では頭からつま先までどこをどの程度傷害されているカゝ不明であり，交通事故などの高エネルギー事故では目前で死亡することが多い.外傷には一見特有な診療手順が取られているようにみえるが，実は重症な救急患者の診察に共通する診療理論が確立されている.