『難経疏証』の成立過程-多紀元胤書入『難経集注』

摘要

この度、多紀元胤著『難経疏証』の成立について新知見を提供する資料が見いだされた。元胤書入『難経集注』濯纓堂本(個人蔵)である。本書の書入は『難経疏証』編纂のごく初期になされた校合、諸書引用の記録である。多紀元胤(一七八九?一八二七)、名は元胤、字は紹翁?奕祺、通称は安良?安元、号は柳沜。江戸考証学派の代表的医家.多紀元簡の三男、異母弟に元堅がいる。元簡に医学を、大田錦城.古賀精里に漢学を学び、父急逝により二十三歳で家督。文政五年法眼。父の遺著刊行.完成を進めたが、早逝により多くが未完のまま残され、元堅へと引継がれた。享年三十九。著作には『難経疏証』のほか『医籍考』『体雅』『疾雅』『薬雅』などがある。