体幹(胸部?腹部)のしびれ

摘要

胸腹部のみに知覚障害を呈することは多くない.理由として，日常診療において頻度が高い変形 性脊椎症などの，胸椎での発生頻度が低いこと，頸椎レベルの疾患では，胸髄領域の上行性知覚経 路は，頸髄索路と腰仙髄索路の間にあるため単独での障害をきたしづらいこと，体幹感覚の大脳皮 質における局在領域が狭いことがあげられる.一方で，体幹の皮膚分節知覚帯（デルマ卜ーム）に明嘹 な感覚障害がある場合，胸髄領域では運動系の徴候が乏しいこともあり，病粜部位診断に有益な情報 となる.実際の診療では，筋骨格系,内臓由来の感覚異常は除外する必要がある.肋間神経痛は病名ではな く，あくまで症状であり，治療可能な器質性病変を常に考慮すべきである.上胸部や背部の疼痛では頸椎疾患の偽性局在徴候を鑑別する.突然発症の胸腹部における帯状感覚障害は，早急なMRI診断を 考慮するべき緊急性疾患があることを念頭に置く.