がん登録システムとその役割

摘要

がん対策を正しく方向づけ,効率よく実施するためには．がんの実態を正確に把握する必要がある.がん登録はがんの実態を把握するための中心的な役割を果たし，がん対策を実施するうえで必須の情報インフラである．逆に,がん対策を実施しないのであれば,がん登録を強力に整備する必要はない.　わが国のがん登録システムのなかで,諸外国に比べて決定的に遅れているのが地域がん登録の登録精度である．現状では,登録漏れの影響で罹患率として20％程度の過小評価となっていると推定される．登録精度を高めるためには,その基盤である院内がん登録を整備する必要があり，このためには．標準的登録手順の整理．標準登録システムの開発,腫瘍登録士の養成とその教育研究プログラムの開発が緊急の課題である．さらに，生存率について正確なデータを得るには,正確な予後調査が必須であり，地域がん登録．院内がん登録,臓器がん登録において共通の課題となっている.一方,がん医療の賀の均てん化の程度を検証するためには,生存率などの指標に加えて．適切な対象に対して標準的な診断治療が実施されているかどうかなど,直接診療にかかわるデータが必要であり,　追加的な仕組みを検討する必要がある．