新修·意釈『東洞先生谷問』(17)

摘要

四十五歳の男子、飛脚を以って伺い奉り、御指図を以って、苓桂苑甘湯に応鐘を兼用し、其の後の容子を、先月十日出の三度便に、委細を申し上げ侯後、大野に罷り越す、腹状はいかにも宜しく、動は臍上より心下へ貫き之れ在り、心下にあつまり不快の由、申し開き候故、とくと按じ見申し候処、少々癌硬の気味を相い見候に付きて、桂枝人参湯を二貼用い、腹状を相い考え候処、甚しき火気が御座候、求も心下も楽に成り候由、一両日右の通り用い、相い考え候えども、相い替わり品御座無く候、病人は安心して妾た用い候こと故、又々苓桂耽甘湯を用い置き申し候、然れども、兎に角上道し、動惇が退き申さず、難儀仕り候、小人の逗畜中は、甚だ快く、心頭も丈夫に御座候間、緩々逗留仕り侯様、申し開き候えども、病用が多く、二三日逗留し、罷り帰り申し候処、其の後も種々申し分御座候、腹状にては随分宜しく相い見候えども、其の身は少しも快きこと之れ無き由、腹状と病人の口上とは大敵歯し、合点が参り申さず候、痩衰々々と書状毎に申し越し候、食餌も減らず、病人の様には相い見え申さず候、乍然至って真実なるもの野殻、心の方にては、毛頭虚言など申す様なる者にては之れ無き候えども、右に申し上げ侯通り、腹状又は食餌等とは敵前仕り候て、合点が参り申さず侯、昨日も書状が到来し、申し越し候趣、御覧に入れ申し候、今般も飛脚を以って申し上げ候えども、失脚が多く御座候故、先ず大概申し上げ候、何卒々々、先書、並びに今般の尊答を早速被り成り下さり候様、偏く願い奉り候、且つ又、先日逗留中に、毎日接腹の処、淵底の＝寿が、或いは左、或いは右に転勤仕り候、此の病人には毎々責められ迷惑仕り候。