当院における保存期腎不全検査教育入院の効果

摘要

背景および目的：慢性腎不全は，病因，臨床経過，合併症，および治療法?治療反応性が多様な病態である。よって患者ごとに正確な診断を行い，的確な治療方針が必要である。そこで当院では，2006年から保存期腎不全検査教育入院を発足させた。入院の目的は，①腎機能増悪因子の解析，②自己管理できる正確な知識の習得，③ 心脳血管合併症の早期発見，である。2012年4月現在700例を経験している。この検査教育入院の有効性を証明 するため，その効果を検証した。方法：2006年10月から2012年4月までに保存期腎不全検査教育入院を経験した700例のうち，退院12力月 後まで追跡できた連続症例469例を対象に，入院前6力月間と退院後12力月間の腎機能低下速度の比較を行つ た。さらに，対象者全員を糖尿病性腎症群(DM腎症群）と非糖尿病性腎症群(Non-DM腎症群）に分け，それぞれ 入院前後の腎機能低下速度の比較を行つた。結果：退院後12力月間の腎機能低下速度は0.001 mL/min/1.73 m~2/monthであり，入院前6力月間の腎機能低下速度0.316mL/min/1.73m~2Anonthに比べ，改善を認めた。特に退院後6力月間の腎機能低下速度は入院前より 有意に改善していた（P値=0.0112)。またDM腎症群とNon-DM腎症群との比較では，入院前6力月間の腎機能 低下速度に関して，DM腎症群のほうがNon-DM腎症群に比べ腎機能低下速度は72.3倍速かった。DM腎症が腎 予後不良であると改めて示す結果となった。しかし両群とも，教育入院によって退院後腎機能低下速度は改善し たことから，DM腎症に対しても検査教育入院の有効性が示唆された。結論：保存期腎不全検査教育入院により，退院後，腎機能低下速度が抑えられ，このプログラムの有用性が検証された。