新規発癌モデル，芽細胞発癌説（fetal cellcarcinogenesis）と臨床検査の将来

摘要

癌という病気について多くの研究者がどのような見方をしてきたかについては有名な癌研究者のRobert Weinbergらが雑誌Cellに20世紀の癌研究の総決算として書いたThe Hallmarks of Cancerという総説に詳しい。癌は転移能·浸潤能等の悪性形質を持たない正常細胞に癌遺伝子·癌抑制遺伝子の異常が起こることで，癌遺伝子の異常は癌化のァクセルを踏む方向に，癌抑制遺伝子の異常は癌化のブレーキをゆるめる方向に作用し，良性の腫瘍細胞から悪性の癌細胞へ，さらには激しく転移·浸潤を起こす未分化な癌細胞へと変化していくことで発生するとのことである。この説は多段階発癌説と呼ばれ, 現在でも最も多くの研究者に支持されている発癌仮説であろう。しかし，我々は甲状腺癌の研究を進めていくうちに，二の仮説ではどうしても理解できない現象にいくつも突き当たった。そこで，あえてこの有名な多段階発癌説に弓を引いて新たな発癌モデルを構築することを決意したのである。