人工臓器の新しい学際領域を求めて

摘要

人工臓器は，黎明期のパイオニア達の尽力によって急速に発展し，今日では多くの患者を救命·延命するに至った。 筆者が主として携わってきた人工腎臓の分野でも，不治の病といわれた腎不全の患者を救命し，現在では全世界で100万人を超える透析患者の生命を維持している。 1945年，Dr.Kolffが初めて急性腎不全患者を救命した症例は17例日で，最初の症例から2年の歳月を要したと聞く。 おそらく当時は「人工腎臓などで患者を救えるはずがない」という風潮が一般的であり，2年も結果を出せなかったDr.Kolffは殺人鬼扱いされたかも知れない。 それでも諦めずにチャレンジし，今日の透析療法の礎を築いた同博士に畏敬の念を抱かざるを得ない。 自己の信念と技術にゆるぎない確信をもっていたに違いない。