進行癌における輸液と栄養管理

摘要

進行癌患者ではエネルギー摂取量の減少，消費量の増加や代謝異常などにより栄養障害が生じ，癌の進行に伴い生体は消耗，衰弱し，ついには高度の栄養障害を来し，癌性悪液質状態に陥る。 担癌に基づく栄養障害では，単に栄養摂取量の減少とは不均衡なprotein－energymalnutrition（PEM）の様相を呈することが多く，崩壊した宿主の蛋白が腫瘍に取り込まれていることがうかがわれる。 PEMは癌患者の予後を大きく左右する重要な因子である。 また，癌治療により癌患者の栄養状態は影響を受け，栄養療法の如何によって癌治療の成否が左右されるので，適切な栄養管理が求められる。 　 一方，完全静脈栄養（totalparenteralnutrition：TPN）の普及は癌治療の面でも目覚ましく，手術症例での治療成績向上のみならず，末期癌で経口摂取が不能な患者の延命処置としても用いられているのが現状である。 しかし，このような延命処置としてのTPNには人権や倫理をも含む多くの問題を包含している。 　 本稿では，進行癌患者の集学的治療の一環としての輸液，栄養管理について述べる。