小児期発症炎症性腸疾患の治療戦略一潰瘍性大腸炎一

摘要

潰瘍性大腸炎の病因は不明な部分が多いが，一般に 遺伝的素因と腸内細菌を含めた環境因子(食品，感染， 薬剤など）を背景に，免疫異常をきたして，発症する 慢性腸炎である.近年，潰瘍性大腸炎の患者数は増加 傾向で，成人領域だけでなく，小児科領域においても 日常診療で経験されることが多くなつてきている.潰瘍性大腸炎の治療においては，現在完治させる治 療法は確立されておらず，薬物療法で大腸の慢性炎症 を沈静化して，寛解導入を計り，再燃しないように寛解維持治療をして患児の健常な発育と，日常のQOL を担保することが治療目標である.小児期潰瘍性大腸 炎の治療においては成人で推奨されている治療をその まま踏襲することは推奨されず，成人の潰瘍性大腸炎 と異なつた小児の潰瘍性大腸炎の特徴を理解して治療 に当たることが必要である.