体外受精反復無効例に対するhatching stage胚移植の試み

摘要

IVF－ETにおいて良好な成績を得るためには最良好胚の選別が不可欠である．良好胚を胚移植するために，さまざまな培養液を用いた体外受精や胚盤胞期で胚移植する方法，前核期で良好胚になり得る胚を判定し移植する方法など多くの幸陀がある．以前，我々は，prospective randomized studyによって3日目胚移植と胚盤胞期胚移植（5日目胚移植）の比較を試みたが，その妊娠率に差はなかった．そこで今回，前核期胚を従来どおり培養し，2日目から3日目に機械的方法により透明帯を開孔するassisted hatching（AHA）を行い，胚盤胞を更に培養しhatching stageに達したことを確認して胚移植を試みた．対象は2000年11月21日より2001年9月27日までにIVF－ET施行回数が5回以上の妊娠困難例とした．hatching stageでの移植（ET）は54周期であった．コントロールとして，1998年9月より2001年8月までにIVF－ET施行回数5回以i（コントロール①群）であった周期の妊娠率を比較すると，hatching stage胚移植群は29．6％（16/54），コントロール①群は10．1％（29/287）であった．着床率は，hatching stage胚移植群で16．2％（17/105），コントロール①群で49％（34/694）であった．流産率はhatching stage胚移植群は50．0％（8/16），コントロール①群は41．4％（12/29）であった．継続妊娠率はhatchingstage胚移植群は14．8％（8/54），コントロール①群は5．2％（15/287）であった．hatching stage胚移相は，最良好胚の選別，子宮内膜と胚盤胞における何らかの相互作用により妊娠率を向上させていると考えられ，IVF－ET反復無効例に有用であることが示唆された．