増本智彦

摘要

脳神経領域では，原発性腫瘍や転移性脳腫瘍に対して放射線治療がしばしば行われる。腫瘍以外では，動静脈奇形も放射線治療の対象となる。放射線治療の際には，治療対象の病変のみならず周囲の正常脳組織も放射線を受けるため，脳組織に特有の放射線障害を生じる。また，上咽頭や頭蓋底の腫瘍に対する放射線治療において，脳の放射線障害を生じる場合もある。 脳における放射線障害では，管の損傷が最も大きな要因となる。活発に増殖する血管内皮は放射線に対して脆弱であり，血管内皮や基底膜の損傷，管透過性の変化，動脈硬化の促進，毛細血管の拡張などによつて様々なパターンの障害を生じる。虚血性の要素が大きいが，症性の要素や線溶系や免疫系などへの影響も複合する。