陰圧性肺水腫と陰圧性肺胞出血3例の報告

摘要

急激な上気道閉塞を契機に胸腔内に強い陰 圧が発生した後に生じる肺水腫は，陰圧性肺水腫(negative pressure pulmonary edema ： NPPE), 肺胞出血は陰圧性肺胞出血（negative pressure pulmonary hemorrhage ： NPPH)と呼ばれている. NPPEはOswaltらが報告して以来，麻酔科領域， 特に気管揷管前後などの周術期での報告が多い。 原因としては喉頭痙攣が一番多ぐ約半数を占め る2)。それ以外の原因には舌根沈下，喉頭浮腫，吃 逆,クル—プ，喉頭蓋炎，腫瘍，血腫，気管揷管チュー ブの誤咬，食物の誤嚥などの報告がある。 NPPH はSchwartzらによって初めて報告4)され，NPPEと 同じ機序で生じる。しかし，より強大な陰圧が胸腔内 に生じる必要があるために報告例は少ない。今回は同機序によると考えられた陰圧性肺障害と して，2例のNPPEと1例のNPPHを経験した。胸 部CTの特徴と，そこから考えうる病態について検討した。