漁業の環境·生態系保全機能－里海管理の伝統

摘要

1995年、青森県下北半島の尻屋埼で浜尻屋遺跡が発見された（図1）。 この遺跡はその後の発掘調査で、14～15世紀に形成された中世のアワビ貝塚であることが確認された。 中世のアワビを主体とする貝塚は他に類例がなく、国の文化審議会は2006年5月にこの遺跡を国の史跡に指定するよう、文部科学相に答申している。 この遺跡から出土した貝類はほとんどがアワビで、貝層厚は最大で1.2mに達し、周囲には釜処の跡が発見されていることから、乾鮑の加工が行われていたことを示唆している。 中世の頃から下北半島の辺境の地では産業的にアワビが採取されていたことになる。この尻屋では今でもなおアワビは沿岸域の主要な漁獲物であり続けている。 つまり、14世紀から21世紀に至るまで、尻屋の人々は産業的にアワビを獲り続けてきたのだ。 この間、北海道の駒ヶ岳の噴火によって漂着した火山灰で尻屋地先の藻場は壊滅的な打撃を受けたが、約30年に及ぶ試行錯誤の結果、立縄式造成法でみごとに藻場を再生、アワビの資源を復活させた。この浜尻屋遺跡は、尻屋の人々が約700年の長きにわたって沿岸域の資源を持続的に利用し続けてきたことを語っている。 G·バーディンは共有地を自由に使いっづけることによって共有資源が乱獲されて枯渇を招くとした。 しかし、こと日本の沿岸域では共有資源は地域で管理され、いわゆる「共有の悲劇 工习k生しなかったのである。