第31回 太陽熱で冷房や涼房や除湿

摘要

太陽の“熱”で冷房するという手品のような話。このかんきょう随想第7回でとりあげたサンシャイン計画の中の目玉として1974年から研究開発が始まった。手品といっても当時すでにその技術はあった。ガス冷蔵庫の原理と同じといえばそれまでだが，ガスの焔の代わりに太陽熱を使うには高温集熱器と100℃以下で作動する吸収冷凍機との開発が必要であった。ガス冷蔵庫では吸収冷凍機が使われるが，この吸収というのは，例えば塩を空気中に放置すれば空気中の水分を吸収して潮解するときの「吸収」であって，それを熱すれば乾いてまた水分を吸収する能力が再び生まれる。この過程は「再生」といわれ，吸収冷凍機では普通の塩NaClの親類でより吸収能力の強い臭化リチウムLiBrの水溶液が使われる。この濃溶液は液体でも水分を吸収して稀溶液となるので，太陽の熱で温めれば水分が蒸発して再び濃溶液になり再生される。この濃溶液を冷却塔で常温近くまで冷却し，これを水の入った容器に通して美空にすると蒸発して水が冷えるので，この冷水を空気と熱交換すれば冷風となりそれを部屋に送れば冷房となる。この太陽熱による冷房の技術はサンシャイン計画の初期に完成し，国庫補助もあって1980年前後には多くの大型ビルで実用化された。