名古屋市と環境問題

摘要

大学を出ると直ぐに名古屋市の公設試験研究機関に入り現在の仕事に就きました．大学の研究室では反応装置内における物質移動現象をコンピュータによってシミュレーションを行っていた者が，現職場では先輩研究員に就いて名古屋市とその近郊の中小企業から持ち込まれる傘属製品などの腐食原因調査に携わるようになりました．微分方程式をたてて数億計算を行っていた大学の研究室から腐食防食の世界に移り，余りにも大ざっぱな物事の捉え方に当時は困惑しながら仕事を行っていたものです．調査を依頼される企業の業種は様々で，その調査内容も千差万別．材料を取り違えによる単純な理由によるもの，あるいは，各種資料を頼りになんとか原因にたぎり着くことができたものなど様々な経験を積ませてもらっています．このような日常的な仕事のほか，勤務して間もない頃に名古屋城の金シヤチを地上に降ろして展示するイベントがあり，その際に足場を組んで天守閣の屋根にのぼり金シヤチの腐食状況を調べるといった名古屋市の職員ならではの仕事を経験させてもらいました．高さ50mほどの櫓の上で足がすくむ思いで金シヤチを覆う鱗の損傷状況を調べましたが，金箔で包まれた一枚一枚の鱗は長年にわたる風雨に耐えて金シヤチの威光を放っていたことが当時の思い出として印象深く残っています．