突起付与試験片による応力腐食割れ加速試験

摘要

本研究では，突起付与試験片を用いたSSRT試験において，PWSCCが加速される要因について，試験および解析による検討を行った。 試験では，熱処理をして冷間加工の影響を取り除いた突起付与試験片を用いたSSRT試験を実施し，試験結果に及ぼす冷間加工の影響を考察した。 そして，解析においては，突起加工およびSSRT試験の過程を有限要素解析により模擬し，試験片の加工度，SSRT試験過程での応力やひずみの変化を調べた。 そして，以下の事項が明らかになった。 （1）突起付与試験片におけるPWSCCの加速は突起加工による冷間加工の影響が大きい。 （2）突起加工によって，加工度が30％以上になる部位も存在する。 しかし，加工度のばらつきは大きい。 （3）金型と試験片の摩擦係数μや，試験片の凹面を成形する金型凸部分の曲率半径ρは，突起付与試験片の加工度に影響を及ぼす。 とくに，曲率半径ρは試験結果に及ぼす影響が大きいと考えられる。 （4）突起付与試験片を用いたSSRT試験過程における応力やひずみは通常の突起加工を行わない試験片に比べて大きくなった。 以上のように，突起付与試験片におけるPWSCCの加速は冷間加工と，SSRT試験過程での大きな応力やひずみによっていることが明らかになった，そして，解析によって加工度や応力·ひずみの億を得ることができた。 しかし，同時にSCC破面率などの試験結果とこれらの要因の関係を定量的に関連づけることが困難であることも示された。 以上のことから，突起付与試験片を用いたSSRT試験は，これまで標準的なSCC試験として実施されているSSRT試験や走荷重試験または，Uベント，リバースUベント試験のように，応力やひずみ，または材料に冷間加工を与えて試験結果を得るという手法の一つとして考えることができる。 そして，比較的短時間に結果を得ることが可能なこと，試験結果のばらつきが少ないなどの利点を有していることから，600合金のPWSCCに限らず，SCCの加速試験として有用であると考えられる。