自動車車両における防錆鋼板の穴あき腐食と防食機構

摘要

北米融雪塩散布地域を5年から11年走行した車体を回収して，その腐食外観調査ならびに極値統計による防錆鋼板の穴あき寿命の解析の結果，以下のことが明らかとなった。 1）車体の穴あき腐食は，ドアヘム部，サイドシル合わせ部などの鋼板合わせ部で多く発生していた。 　 2）厚目付けの溶融亜鉛めっき鋼板（付着量120g／m~2）の耐食性は良好であり，穴あき寿命はサイドシル合わせ部で約14年であった。 　 3）亜鉛めっき防錆鋼板の腐食過程は，以下の4段階に分割できると考えられる。 Stage 1：防錆鋼板のめっき皮膜が全面被覆しそのめっき皮膜が腐食する段階Stage2：めっき面が部分的に消失し下地鋼をめっき皮膜が犠牲防食する段階（2）Stage3二亜鉛腐食生成物により下地鋼板の腐食が抑制される段階（3）　 Stage4：下地鋼がめっきを施さないときと同じ速度で腐食する段階（4）　 鋼板合わせ部では，Stage3の存在が特徴的である。4）Stage3の段階で，ZnOやZnCl_2·4Zn（OH）_2は，結晶性の鉄さびの生成を抑制する。 鋼板合わせ部にこれらの腐食生成物が生成すると，鉄さびの鞍化還元反応が抑制され，下地鋼の腐食が抑制されることをモデル実験により検証した。 5）ジンクリッチ系プライマー鋼板を適用したドアヘム部の穴あき寿命は，約6年～7年であった。 6）ジンクリッチ系プライマー鋼板では，プライマー塗装が塗装／鋼板界面で剥離して，その塗装の下で下地鋼板の腐食が発生していたや　 プライマー塗装は使用初期から防食機能を有していなかったものと推定される。