長時間再溶融処理を施したNi基自溶合金溶射部材の疲労特性に及ぼす皮膜厚さの影響

摘要

溶射は，比較的安価な基材の表面に対して，耐食性や耐熱性，耐摩耗性を付与することのできる表面処理手法として幅広い分野で実用されている．しかしながら，溶射部材の疲労特性に関する研究は比較的その数が少ないため，長期間の使用に対する信頼性と安全性の確保に関しては，必ずしも十分とは言えないのが現状である．著者らは，溶射法の中で比較的簡便であり大型部品に対↓ても適用可能なガスフレーム法による自溶合金溶射に注目し，その疲労特性に関して一連の研究を行ってきた．特に，自溶合金の溶射に特有の再溶融処理（以下フェージング）に注目し，処理条件が疲労特性に友ぼす影響について詳細な検討を行っており，これまでに，フェージングの温度と時間をコントロールすることにより，疲労寿命のばらつきの少ない良好な溶射皮膜を形成可能であることを明らかにした．また，Ni基自溶合金を対象として，疲労特性に及ぼすフェージング時間の影響について検討を行い，(i)フェージング時間の増加は，溶射皮膜内においてCr化合物の偏析を促進すること，(ii)その場合，偏析部位以外の組織の硬さが低下し，皮膜中にいわゆる細織的弱部が形成されるため，疲労強度が低下することなどを明らかとした．