パターンマッチングによるGPR画像の複数孤立物体の検出方法

摘要

地中レーダによる測定データをパターンマッチングにより処理して対象物を検知する方法について，数値シミュレーションデータとフィールド測定データを用いて有効性を検証した。 孤立物体の位置,受信波形，屈折率等に不正確な値を与えた場合でも比較的良好に処理できることから，本方法が実用的であることを示唆している。 フィールドで取得したデータについても，パラメータの調整は必要であったものの適切な処理結果を得ることができた。 しかしながら，標的からの反射波形とテンプレートとの乖離が大きな場合，強度が高いクラッタを除外可能なしきい値の設定が困難な場合がある。この間題の解決法の一つとして，標的である管路に沿った複数の位置で管路を横断する方向の断面画像を取得し，断面画像間に共通する物体を連結して，管路とそれ以外のものを識別する方法が考えられる。 図14dはこのようにして得た3次元画像である。 本研究の方法はKaaresen et al.（1977）の方法と比べて格段に計算量が少ない。 本研究の方法は後者に比べて処理時間が1/10から1/100であり，デイフラクションスタックマイグレーションと同程度の時間である。 一方,後者は受信パルス波形の推定を同時に行うことができる。 そのため，真の波形に近い受信パルス波形を予め用意する必要が無い。 これに対して本研究の方法は，標的特定の性能が設定した受信パルス波形の精度に依存するため，真の波形に近い受信パルス波形を用意する必要がある。 デイフラクションスタックマイグレーションと同程度の処理時間でより簡潔な処理結果が得られるという点で，本研究は地中レーダの使い易さを1歩前進させたと考える。 しかしながら真に使い易い地中レーダを実現するためには，標的特定の確度の向上，単なる3次元画像化に止まらずユーザが利用しやすい情報の提供方法など，今後解決すべき多くの課題が残されている。