3次元不均質粘弾性媒質中の断層系における大規模地震サイクルシミュレション実現に向けて

摘要

日本列島とその周辺では，太平洋プレートヤフイリピン海プレートが沈み込み，そのプレニト境界でマダニチエード7や8クラスの大地震が繰り返し発生するとともに，内陸でも大地震の繰り返し発生によって活断層が発達している。 このような地震の繰り返し，すなわち地震サイクルを数値シミュレーションによって再現する試みは80年代から行われてきた（たとえばTse and Rice，1986）。 ただし，ほとんどのシミュレーションでは，均質弾性媒質が仮定されてきた。最近になって水平成層構造で，アセノスフェアの粘弾性を仮定したシミュレーションが行われるようになった（Hashimoto and Matsu'ura，2002）ものの，沈み込む弾性的なプレートの存在や場所による粘性率の変化といった3次元的な不均質構造を考慮した計算は行われていない。 こうした3次元不均質構造が地震サイクルに与える影響は明らかではないが，地震前後の地殻変動の起こり方や，ある地震が別の地震の発生に与える影響を考える際には粘弾性構造の影響が無視できなく怒る（でhaたher and Rundle，1984；Freed and Lin，2001等）。 従って，日本列島における地震の発生やその相互作用を調べるためには，媒質の3次元的な不均質性，管に汲み込むプレートの構造や粘弾性の影響を考慮することが必要となる。 そこで，3次元粘弾性不均質構造を孜うことのできる有限要素法をベースにして地震サイクルシミュレーションを行うことを目指して，平成14年度から，「複雑断層系の地震発生過程シミュレーション」というテーマで地球シミュレータの共同研究プロジェクト（代表：平原和朗）を進めてきた。