変圧器の寿命診断技術と更新技術

摘要

原子力発電所は運転開始から約30年を経過するようになり，主要電気設備の一つである変圧器においても経年化対策を考える時期にある。 変圧器の寿命は，絶縁紙の劣化による要因が大きく一般的には期待寿命30年と言われているが，運用条件や温度特性等によって絶縁紙の寿命は異なる。 そのため，計画的な経年化対策を検討するに当たり，絶縁紙の寿命診断技術は重要である。 今回，九州電力㈱の旧玄海原子力発電所1号機主変圧器の劣化調査を行った結果について，その概要を紹介する。 更新時期については，最も劣化の早い巻線最高温度部の絶縁紙の平均重合度を推定し寿命到達時期を予測する寿命診断結果と，定検工程等を勘案し決定された。 新製の更新器は，主変圧器·所内変圧器の一体化を図り外鉄形の特長を生かしたコンパクトな設計として既設主変圧器エリアに設置した。 所内変圧器は，将来的な系統受電によるプラント起動を考慮し負荷時タップ切換器付きとした。 また，既設主変圧器の一部付属品の再使用や今後のプラント寿命との整合性を図る寿命設計等の合理化や，現地据付けにおける新しい工法を採用するなどして，信頼性·安全性の確保の下に無事計画どおり工事を完了した。