端末小型化に向けた小型高性能アンテナ技術

摘要

近年，携帯電話アンテナの小型化は著しく，筐体（きょうたい）内に内蔵されているのが当たり前になっている。 十数年前の製品では長さ130mmの引出し型ホイップアンテナが使われたが，最近の内蔵型アンテナは十数mm，体積2～3cc程度である。 しかし，小型化されても性能はさほど変わっていない。一方，アンテナの動作帯域と放射効率はアンテナの大きさと密接に関係する。 例えば，λ/2π（λ：波長）より小さい小型アンテナの動作帯域は下図の式で表現される。 800MHz帯で十分な放射効率，反射特性（例えばVSWR (Voltage Standing Wave Ratio)＜2）を得るには，下図の式では上記内蔵アンテナの動作帯域が1～2％となり，携帯電話で必要な帯域（例えば6％以上）に届かない。 実は携帯電話では“アンテナ”と呼ばれる部品以外の金属，例えば基板のGND板をアンテナの一部として利用し筐体全体でアンテナの性能を確保している。 さらに，このGND坂上の電流を制御してダイバーシティ効果を得る技術も開発されている（要旨の図）。しかし，この筐体利用の手法はアンテナと筐体内の他部品との電磁結合干渉を強める，アンテナ評価のためにつないだケーブルに電流が流れて特性が変化し，正確な評価が困難になる等の問題を生じる。 ここではこれらの課題に対処して端末小型化を実現するための技術，(1)筐体を利用したダイバーシティアンテナ構成技術；(2)アンテナと筐体内回路の結合解析技術；(3)小型端末の高精度アンテナ測定技術について述べる。