低圧開閉機器の遮断技術の動向

摘要

低圧開閉器·遮断器の分野では，現在においても特殊な用途を除いて，寸法，コストの点で機械接点式が半導体方式より優位にあり，電流遮断動作時に接点間に発生する気中アーク（以下“アーク”という）を消弧し，接点間の絶縁を回復させる遮断技術の向上が求められている。 これら低圧開閉機器が遮断すべき電流値は，数A以下～数百kAと広範囲にわたり，アーク挙動は電流領域により大きく異なる。 そこで，本稿では，遮断電流領域を小電流領域，中電流領域，大電流領域の3つに大別し，各領域でのアーク制御に有効な手法，及び近年の遮断技術の研究開発状況について述べる。 数十A以下の小電流領域では，自己電流による電磁力が弱くアークが駆動·伸張されにくいので，特に開極距離が短い開閉器では消弧性能が電極状態に大きく依存する。 一方，数十A～の中電流領域以上では，アークを駆動·伸張するための力（電磁力，気流等）の影響が大きくなり，これを強化する手法，例えば磁性体，駆動磁場を発生する電路構成等が有効となる。さらに，大電流領域では，膨大なアークエネルギーを処理する必要があるので，事故電流を絞り込む限流（処理すべきエネルギーを低減できる）に重点が置かれ，様々な限流遮断技術が開発·適用されている。 また，グローバル化に伴う高電圧回路(AC600, 690V)での遮断容量格上げ要求に対応するため，PA (Polymer Ablation type)オートパッファ技術の高度化及び各機種への展開に取り組んでいる。