固有ひずみ理論に基づく木材の水分傾斜推定手法の概念提案

摘要

木材は軽量かつ比較的強度が高く，入手性や加工性に優れるなどの長所を持ち，その利点から建築材や，航空機などの様々な構造材に用いられる．また，循環型エネルギーへの転換が課題となっている昨今においては，再生可能資源である木材の利用があらゆる分野で注目されている．一方，木材製品を製作する際には，その寸法を安定させ強度を高め，変色や腐敗を防ぐために木材を乾燥させる必要があるが，乾燥の際，木材の外縁部から水分が抜けていくため，内部の水分が残留することにより，外縁部から内部にかけて水分分布に傾斜ができる．この水分傾斜はとりわけ高温乾燥材で大きくなる傾向があるが，木材の変形や割れの発生に大きく影響を及ぼすため品質保証の観点からその把握は重要となる．さらに，木材は同じ乾燥条件であっても水分量が大きくばらつくことが一般的に知られており，個々の木材の全域にわたる水分傾斜を，製品としての品質を損なわないよう非破壊に，かつ定量的に評価することが求められる．