ショットピーニングしたマルエージング鋼の疲労強度に及ぼす道変態オーステナイトの影響

摘要

マルエージング鋼は高い静的強度を有するものの疲労強度はかなり低い千　 本研究では本鋼の疲労強度向上を目的に，疲労強度に及ぼすショットピーニング処理と道変態オーステナイトの有無の影響を検討した。 得られた結果を要約すると以下のようになる。 （1）ダブルショットピーニングにより，表面は平滑化し、硬化量も高くなる．また残留応力は，第一段ショットで形成された残留応力分布の再分布により,表面近傍で最も高くなる。 （2）道変態オーステナイトが存在する場合，ショットピーニング材の表面粗さは大きく，また硬化および残留応力の大きさは小さくなる。（3）疲労破壊機構は応力レベルによ「り異なりト応力レベルの低下に伴い、表面破壊，表面と内部の混合破壊そして完全な内部破壊に変化する。ニのような破壊機構の遷移は逆変態オーステナイトの有無に関係なく同様に生じる．またフィッシュアイは逆変態オーステナイトが存在しなければその縁は複雑な形状となるが,道変態オーステナイトが存在すれば．ほぼ円形の明瞭な縁を持った形状のものとなる。 （4）ショットピーニングにより，疲労強度は大幅に上昇する。 （5）　 ショットピーニング材のS-N曲線は二段折れ曲がりを示し，一段目のステップは逆変態オーステナイトが存在すれば明瞭に現れるが，それが存在しなければ不明瞭になる，しかし逆変態オーステナイトが存在する場合でも，微粒子によるショットピーニングやダブルショットピーニングを行うと不明瞭になる。 （6）ダブルショットピーニングにより疲労強度は,表面破壊が生じる高応力域では上昇するが，内部破壊が生じる低応力域ではほとんど影響を受けない。 （7）逆変態オーステナイトの存在により疲労強度は，内部破壊域では上昇するが，表面破壊城では粒径が大きいぼど大きな低下が生じる．しかし微粒子ピーニングやダブルショットピーニングを行うとその低下はほとんど生じない。 したがって，ダブルショットピーニングと逆変態オーステナイトの生成を組み合わせる、ことにより広範囲の寿命域での疲労強度向上が可能である。 　 なお，本研究におけるショットピーニング処理は，新東工業（株）ピーニングセンター主任長島悦一氏にお願いし、同社の協力のもとに行われた。 関係諸氏に謝意を表する。