微視的不均質をもつフェライトーマルテンサイトニ相組織鋼における破壊じん性試験でのき裂の発生および伝ば挙動

摘要

材料を実構造物に適用する場合，その降伏応力や引張強度のみならず，最終破壊に至るまでの変形能を考慮すべき場合がしばしば存在する．このような場合には，ある程度の引張強度を確保したまま降伏応力を下げる，すなわち，降伏比（降伏応力/引張強さ）を低減することが望ましい手法の一つとして考えられている．材料の降伏比を低減する手法として，組織の微視的な不均質を積極的に取り入れた材料の二相組織化が挙げられる．ここで，材料組織を微視的に不均質な形態とすることによって，負荷を受けた際に材料内部には，均質材として巨視的に見た場合とは異なる微視的な応力·ひずみ分布が発生することになる．また，微視的な不均質形態は材料の機械的特性だけではなく，破壊特性にも影響を及ぼすと考えられる．したがって，このような場合の材料設計においては巨視的な強度·破壊時性に及ぼす微視的な不均質形態の影響を把握しておくことが重要である．