二重周波誘導加熱による歯車の高周波焼入れ過程の温度·応力

摘要

高周波焼入れは，浸炭焼入れに比べて省エネルギー効果が高く，経済的であるという特長を持っているが，複雑な形状の場合には，表面形状に沿って一様な硬化層を得るための焼入れ条件を試行錯誤によって見つけなければならないという欠点がある．このため，種々の形状·寸法の被加熱物に対する焼入れ条件の残留応力に及ぼす影響を明らかにし，最適焼入れ条件の選定法の確立が強く望まれている．高周波焼入れによる残留応力については，焼入れ過程の温度測定結果と有限要素法(FEM)による熱伝導解析，弾塑性応力解析法を用いた研究結果が報告されているが，これらの方法では，形状寸法が異なる場合にはそのつど温度測定を行わなければならない．著者らは軸の高周波焼入れ過程の湿度·応力を，被加熱物および加熱コイル内に生じる電流密度分布に着目して，軸対称FEMによる電磁界解析，熱伝導解析，弾塑性応力解析法を用いて計算することにより，焼入れによる残留応力を求める方法を示した．また被加熱物と加熱コイルとのすき間が変化する場合に有効であると考えられている二重周波高周波焼入れによる段付き軸の高周波焼入れ過程の温度·応力を求め，焼入れによる残留応力に対して二重周波焼入れが有効であることを示した．