ニジマス赤血球の低温、低浸透圧および酸素分圧に対するK輸送活性の変化

摘要

サケ、マス類には海水、淡水のいずれで生活していても、体液の浸透圧、すなわち無機イオン濃度を一定レベルに維持する能力が備わっている。本研究では、細胞内K濃度調節に重要なNa，K-pumpとK-Cl共輸送についてニジマス赤血球を用い、低温下、低浸透圧下および異なる酸素分圧の下で測定した。 Na，K－pump活性は、ニジマスの生育水温域（5℃～20℃）では温度上昇に伴い活性が冗進したが、いずれの温度域でも低浸透圧の影響は認められなかった。 K-Cl共輸送活性は、5℃の低温条件では空気曝露下で等浸透圧および低浸透圧のどちらの場合も極めて低く、1％酸素曝露下ではCl依存性は消失した。 一方、20℃では明確な活性が認められ、これらは低浸透圧および空気曝露で上昇した。 本研究によりニジマス赤血球におけるNa，K－pump活性およびK－Cl共輸送活性はいずれも環境温度の影響を受けること、また、後者は低温下で酸素分圧依存的応答を示すことが明らかとなった。