H5N1亜型高病原性鳥インフルエンザと野生鳥類

摘要

2010年11月末から2011年3月にかけて，日本では24 件の養鶏農場，60羽以上の野生鳥類でH5N1亜型高病原 性ィンフルェンザゥィルス（HPAIV)の感染が見られた。 このウィルスは1996年に中国広東省のガチョゥから分離 されたウィルスが起源とされるが，2003年以降，東南ァ ジァ，韓国，日本，中国各地で感染が起こり，2005年以 降はモンゴル，ロシア，ヨーロッパと，野生鳥類や家きん に感染しながらユーラシア大陸を横断してアフリカまで分 布を拡大した。鳥ィンフルェンザウィルス（AIV)は一般に， 野生鳥類，特にガンカモ類（ハクチョウ類，ガン類，カモ 類の総称）の間で無症状のまま感染を繰り返して維持され ていることが知られており，HPAIVの動態にも野生鳥類が深く関わっていること力?疑われてきた。近年，野生鳥類 の生態学的研究とウイルス学的研究のコラボレーションによって，H5N1亜型HPAIVの動態において野生鳥類が果 たした役割について明らかになつてきた。ここでは野生鳥 類における発生4お兄や感染実験，飛翔ルートの解明，それ らの複合研究など，近年の報告を概観してみたい。