飼料成分の急激な変更が黒毛和種繁殖牛の 血液生化学検査値に及ぼす影響

摘要

給与飼料の急激な変更が黒毛和種繁殖牛の血液生化学検査（BC)値に及ぼす影響を調査した。オーチャードグ ラス主体混播牧草の低水分サイレージ，ィタリアンライグラスの乾草およびトウモロコシサイレ一ジをTMRミキ サ一で混合したものを基礎飼料とし，臨床的に健康な黒毛和種経産乾乳牛1群15頭に約1力月間，1日2回給与した。 その後は同一の飼料成分および量の基礎飼料に加えて，大豆粕1.5kg/日/頭を1日2回追加給与した。採血対象牛は 15頭のうち無作為に抽出した5頭とした。大豆粕給与開始日をDay 0として，Day-3およびDay 0,1,2，その後は 1日おきにDay10まで採血した。採血は朝の飼料摂取約4時間後に頸静脈から3種類の真空採血管を用いて行った。 BC値の検査項目は14項目とした。Day-3を対照として，その後のDay 0からDay10までの各BC値を比較した結果，アルブミン（Alb),遊離脂肪 酸（FFA),ブドウ糖（Glu)，タ-ヒドロキシ酪酸（BHB)を含む10項目には有意な差はみられなかった。しかし， 尿素窒素（BUN)はDay-3に比べDay1からDay10の間で有意に高かった（P<0.01)。アンモニア（NH_3)はDay -3に比べDay1およびDay 2で有意に高かったが（P<0.01),その後は低下しDay-3とほぼ同レベルに戻った。乳 酸（LA)はDay-3に比べDay1で有意に高かった< 0.05)。ァセト酢酸（ACAC)はDay-3に比べDay 4, 6, 8 および10で有意に高かった（Day4，6および10: P < 0.05， Day 8: Z5 < 0.01)。これらのことから，黒毛和種繁殖牛において粗蛋白質（CP)が高い飼料への急激な変更ではBUN, NH3, LAお よびACACが上昇することが示唆された。また，NH3に比べBUNの方がCP摂取量を反映していることが考えられた。 有意差はみられなかったものの，大豆粕給与後にFFAやGlu， BHBにエネルギー不足時に似た変化がみられている ことから，TDN充足率が満たされていてもルーメン環境が変化した場合，BC値にはエネルギー不足のような兆候 がみられる可能性が示唆された。