中国江蘇省における水稲の多収穫多肥栽培による施肥窒素量と窒素施肥効率の現状

摘要

中国江蘇省は，中国東部の揚子江下流域に位置し，北部 を山東省，西部を安徽省，南部を浙江省、上海市と接しており（第1図），総面積は10万km2,人口は7，600万人， 耕地面積は500万haである.省北部には淮河が流れ黄海 に面し，省南部は揚子江下流デルタ地帯を形成し，全国第 3の太湖を有するなど，河川および湖沼の面積は総面積の 約30%に及ぶ.稲作灌漑のため運河、クリークが発達し，全国有数の水稲栽培地帯である.水稲の生産量（籾）は全国3位の1772万t (日本の1.6 倍)，栽培面積は223万ha (日本の1.4倍)，単収（籾）は 全国トップクラスの7.9t/haである（第1表，2008年）. 現地では多収性品種が普及しており，一穂籾数が多く大粒 の大穂ィンド型品種ゃ密穂日本型品種による多収を意識した多肥栽培が行われている.中国は窒素（N)肥料の消費量が世界の約30%を占める 最大の消費国であり（FAOSTAT 2007， Guler 2006)，その消 費量は現在も増加傾向にある.N肥料の約1/4は稲作に利 用されることから，中国の稲作は世界消費量の796を占め ることになる（Pengら2009).その中国においても江蘇省は面積当たりのN肥料施用量が最大であり，水稲栽培にお いても肥料の多投カ?行われている（第2表).江蘇省が穀倉 地帯であることを考えると過剰な肥料の施用は，環境に著 しい負荷を与え，N肥料の吸収率を低下させると考えられ る（Wangら2004， 2007).