プロスタグランジンF_(2α)投与による分娩誘起時の血中プロジュステロン濃度の推移について

摘要

著者らはこれまでにプロスタグランジンF_(2α)（以下PGF_(2α)と略す）による分娩誘起について一連の研究を実施し，この技術を実用技術として確立した。 しかし，プロスタグランジンF_(2α)による分娩誘起のメカニズムに関しては，不明である。 家畜の分娩の発現機構については，これまで多くの説が報告されているが，未だ完全には解明されていない。DROST and HOLMは，羊において正常分娩には胎子の副腎が必要であることを報告している。羊あるいは牛において，胎子または母体にコルチコイドを投与すると分娩が起こるが，これは自然分娩の開始の際の胎子から母体への信号の伝達される機構に類似している。 妊娠の維持には，黄体から分泌されるプロジュステロンが必要であり，これによって子宮筋の収縮運動が阻止されていると考えられている。血漿プロジュステロンは，ラット，牛，羊では分娩前に減少する。 これらの動物では，妊娠維持に必要なプロジェストロンの大部分あるいは全部を黄体が分泌しているためである。 ヒトでは，プロジエステロン値は，胎盤が排出されるまで高い値が保たれている。