土壌微生物が創る共生の世界 一その先端的研究事例と農業への応用的研究展開はじめに

摘要

土壌微生物は，窒素炭素などの物質動態，共生による作 物への養分供給，土壌構造の形成や肥沃度の維持向上な どにおいて重要な役割を担い，作物の生育，生産性，品質 と密接に関係している.このため土壤肥料学分野では，古 くから農地の土壤微生物を対象とした研究が行われてきた が，研究手法の限界により多くの謎が残されたままであつ た.ところが近年，急速に進歩した"ォーミクス"が土壤 微生物の研究にも導入され，これまでブラックボックスと されていた土壌中の微生物の生態や機能が次々と明らかに されている.特に次世代シーケンス技術を用いたメタゲノ ム解析法は，これまでの常識を覆すような発見をもたらし， 土壌の微生物世界に対する認識を一変させている（藤井，2011).例えば，微生物学創成期から100年もの間，窒 素循環の主要な反応である硝化は細菌に担われるとされて きすこお'、,2005年にァンモニァ酸化古細菌が見出され農耕 地土壌の窒素動態における重要性が次々と報告されている (Prosser et al.,2012).このような窒素や炭素の動態に関 与する微生物の新知見は（南澤ら，2013),肥培管理のあ り方にも影響するであろう.