チモシー単播草地に表面施用した乳牛堆肥の窒素無機化率を考慮した肥効評価

摘要

堆肥の施用に伴うN肥効をより正確に評価するため，根室地域の酪農場で生産された来歴の異なる堆肥を供試し，Nを中心とした化学成分の違いが，チモシー草地に対する肥料的効果に及ぼす影響を検討した．得られた結果は以下のとおりである．1）堆肥施用区の年間乾物収量とN吸収量は，堆肥無施用区を上回り，同重量の堆肥を施用したにもかかわらず，堆肥によってN吸収量は70.3～120.0 kg ha~（-1），乾物収量は5.9～8.8 Mg ha~(-1)と大きく異なった．2）堆肥の施用に伴うNの単位重量当たりの乾物生産効率（N_e）には約3倍（6.8～19.3 g g~(-1)），堆肥由来Nの牧草による吸収利用率（N_(ab)）には約6倍（0.061～0.368 g g~(-1)）の大きな幅が認められ，堆肥のN肥効を正確に評価するためにほ，T－N含有率の把握だけでは不十分であることが示唆された．3）培養実験による堆肥のN無機化率ほ1.2～72.9％と大きな幅が認められ，これとN_(ab)および堆肥の水分含有率との間にほ，危険率5％水準で有意な正の相関関係が認められた．4）堆肥の水分含有率からN無機化率を推定し，これにT－N含有率を乗じて得た値（堆肥のN供給可能量）と堆肥の施用に伴う増収効果（N_eおよびN_(ab)）の間にはそれぞれ，0.485および0.536と危険率5％水準で有意な正の相関関係が認められ，堆肥のN肥効を正確に評価するための方法として有効であると考えられた．