獣医学系大学における共同獣医学部等設置の取り組み(2) 北海道大学と帯広畜産大学における共同獣医学課程の実施

摘要

獣医学教育界では, 長年にわたり教育改革運動を行つてきたが, 様々な社会情勢により遅々として教育改革は進まなかった.平成20年11月, 文部科学省に「獣医学 教育の改善、充実に関する調査研究協力者会議」が発足し, 2年間の検討の結果, 獣医学教育の改善に関する提 言がなされた.その提言では, 標準的な教育内容を示したコア.カリキュラムの作成と実施, コアカリに準拠し た共通テキストの開発, 動物病院において学生が臨床実習を行った時に起こる違法性を阻却するための共用試,験 の実施, さらに獣医学教育の第三者評価の実施等が示された.これらの提言は, 学生の到達目標を明確にし, 厳格かつ客観的な成績評価を行うための枠組みであり, 日 本の獣医学教育の質を保証するための土台となるものある.このような教育改革を実施するためには, 教員の 増員を図り, 組織改革を伴うような教育体制を構築する 必要があった.文部科学省は平成20年11月に大学設置 基準等の一部を改正する省令を公布した.これにより,複数の大学が相互に教育研究資源を有効に活用しつつ, 共同で教育課程を編成することが可能となった.平成22年1月, 佐伯北海道大学総長と長澤帯広畜産大学学長は, 獣医学の共同教育に関する検討を始めることで合 意した.以下に北海道大学、帯広畜産大学による共同獣 医学課程の概要をまとめた.