福島第一原子力発電所事故後のスズメ目鳥類における生活史 段階に応じた吸収線量率の評価

摘要

福島第一原発事故から1年が経過した2012年に 福島県内で採集したスズメ目鳥類3種（ャマガラ， スズメ，力ワラヒヮ）の成鳥と，シジユウカラの 未孵化卵および巣材で測定した放射性セシゥム (~(134)Csおよび~(l37)Cs)濃度から，内部および外部被 曝線量率と，それらの合計被曝線量率を推定した. 外部被曝線量率が合計被曝線量率に寄与する程度 は，生息地の微細環境（例：地表，空中および樹 上，巣内）の汚染の程度と，生活史段階（成鳥も しくは卵の各段階）に応じた各微細環境での活動 時間の影響を受け変化した.すなわち，シジユウ 力ラの未孵化卵の外部被曝線量率は内部被曝線量 率よりも高く，主に巣材の汚染に由来していた.シジユウカラの主な巣材は多量の放射性核種を保 持することが知られているコケ類で，外部被曝線量と内部被曝線量率の差は1,000倍以上に及んでいた.さらにシジユウカラの未孵化卵で推定され た合計被曝線量率は，野外で測定した空間線量率 をはるかに上回っていた.これらの結果は，野生 動物に対する放射線被曝の影響を評価するために は，詳細な線量分析を実施することと共に.慎重 に対象種の生活史を考慮することで，個体に対す る生物学的影響のより適切な評価に繋がるだろう.