農業土木技術者のための生き物調査（その10、最終講）-水生植物調査法－

摘要

今から約半世紀前，全国の水田雑草を詳細に調査した笠原は，特に繁茂状況が著しい種類を「全国害草」としてリストアップしている。 その中には，アギナシ，オオアカウキクサ，サンシヨウモ，デンジソウ，スブタ，ミズオオバコ，ミズアオイなどの名が見られる。 これらの種類は，今や全て絶滅危倶種もしくはそれに準ずる種となっている水生植物たちである。 このように，近年の観場整備事業による乾田の拡大や除草剤の多用によって，多くの「雑草」が姿を消してきた。 これは雑草防除の観点からみれば成果と言えようが，生態系保全の立場から見れば，農業の近代化によって水田生態系が育んできた生物界の多様性が危機的状況にあることを示している。