複合微生物系集積木質炭化素材を用いた農薬汚染の原位置バイオレメディエーション

摘要

2001年に採択されたPOPs （Persistent Organic Pollutants）条約により1970年代半ばに製造、使用が禁止された有機塩素系農薬6種類（DDT，アルドリン，ディルドリン，エンドリン，クロルデン，ヘブタクロール）を含む12物質がPOPsに指定され，各国で国際的枠組みの中で適正な管理、処理を進めることになった。 日本ではこれらの有機塩素系農薬は製造、使用禁止後，農薬メーカーや農協などにより容器ごと埋設処理されており，2001年の農林水産省の調査によれば1971～72年に埋設処理された農薬が全国174カ所，総量は約3，680tであることが確認された。 現在，農水省や環境省により埋設地点における水質および土壌調査や埋設農薬の分解、無毒化処理技術（主に物理、化学的手法）の検討が行われているが，長期間の埋設により容器が破損し，周辺の土壌、地下水を低濃度で汚染している可能性が指摘されている。 また，「奪われし未来」の著者シーア、コルポーンらは有機塩素系農薬（DDT，BHC）やダイオキシン類などの化学物質が超微量（数十pptレベル）でも野生生物や人間の性発達障害や行動および生殖異常に関わりがあること（内分泌かく乱作用）を警鐘した。 このように，従来のリスク評価では問題にならなかった超微量での化学物質による広範囲の環境汚染が社会問題化しており，農薬等化学物質の環境リスク削減技術の開発が求められている。