中山間地直接支払いによる市民参加と農村コミュニティ'レジリエンス:舞鷄杉山集落

摘要

本稿では、中山間地域等直接支払制度(以下、直払い制度)を運用することにより、荒廃農地の再利用に留まらず、広く市民を巻き込んだ農地の共有化を実現し、衰退直前であつたコミュ二ティがレジリエンス(強靱な適応力)を発揮するに至った過程について報告する。直払い制度は、平地農業地域と比較して条件不利な農業経営環境下におかれる中山間地域に対して支援し、またそれによる多面的機能の確保を目的として平成12年度に創設された制度である。原則として5年間の継続的な農地利用を条件とする助成金制度であり、助成期間終了時に助成要件や交付金単価の見直しがおこなわれ、第3期の現在は地域の実情に対してかなり柔軟に対応できる仕組みとなっている。直払い制度の創設以来一貫した助成要件として特徴的なものが、とりくみに関する集落協定の策定である。助成金の用途については比較的自由度が高いことを踏まえると、協定の策定やその履行自体がきわめて公共的な作業であり、いわば「地域力が試される」とみることができる(2)が、当制度を巧みに活用することによって飛躍的に地域再生に成功する事例もみられる。本稿では、制度第1期、第2期に相当する時期の調査結果になるが、市民農園の開設を契機に集落消滅の危機に対してレジリエンスを発揮した京都府舞鶴市杉山集落(図1)のとりくみを示す。杉山集落は、舞鶴市中心市街地から北東に車で約20分の場所に立地し、平成22年国勢調査によると人口はg人、総世帯数ほ戸の小規模山間集落である。杉山集落の地域資源としては、若狭富士と呼ばれる霊峰「青葉山」をはじめ、樹齢8oo年の大杉を祀る「大杉神社」、その境内から湧き出る「大杉の清水」(写真1)などが有名である。