生理生態特性からみたイチゴ栽培の現状と課題〔5〕 －多様な栽培方法と高設栽培－

摘要

イチゴの栽培方法は石垣栽培，養液栽培，高設栽培など多様である．わが国ではイチゴは一年生作物として栽培されているが，世界的には多年生作物として栽培される地域も多い．わが国でも露地栽培が盛んに行われた頃には多年生作物としての栽培も行われ，「多年生栽培」（永年式栽培）と呼ばれてきた．このような多様な栽培方法が発達しているのもイチゴの特徴の一つである．イチゴは熱帯地方の高地から北欧やアラスカの北極圏に近い北緯65度程度の寒冷な地域まで栽培される．このように広範な地域で行われる栽培法は大きく2つに分けられる．その一つは，原則として毎年更新する方法と，3年以上栽培する方法である．前者は一年生栽培で高めの畦を立てて栽培されるのでannual hillやhill rowと呼ばれる．これと対極にあるのが多年生栽培（matted row：マット栽培あるいは畦作り）で，春から初夏に，苗を広い条問、株間に定植し，植え付け年には花房を摘除して果実を収穫しない．出てきたランナーを各条の両側に誘導し，マット状に配置して，翌年から果実を収穫する（図1）．