世界の天敵利用

摘要

天敵利用と密接に関連した分野にフェロモンの利用がある。 世界の天敵研究者の主要な集まりであるIOBC（国際生物的防除機構）の総会が、一九九六年九月にフランスのモンペリエで開かれた。 そこでの主要なテーマは、研究から現場への技術の移転であった。 そこでは、①低開発国での天敵利用、②先進開発国での天敵利用、③フェロモンの利用が主要なテーマであった。 低開発国での有害生物防除での技術援助では、天敵などの生物利用防除は有力な方法であるが、こういう場面では、日本の出番はほとんどない。日本での天敵の実用化は先進開発国の中ではもっとも遅れているからだ。 同じ年にイタリアのフィレンツェで開かれた国際昆虫学会には参加者の一割に当る三〇〇人近くの日本の研究者とその同伴者が参加したが、IOBC総会への参加は私を含め八人（天敵やフェロモン関係の会社から約半数）であった。 アフリカなどの天敵利用の話は別の機会にするが、今回はフェロモン利用について紹介する。